地元の魅力発信、若き挑戦 老舗旅館5代目の極檀さん(南部町)

清水屋旅館の5代目として修行中の極檀優也さん。フォトブック作りや南部せんべいの紹介など、地元の魅力発信に取り組んでいる=7日、南部町
清水屋旅館の5代目として修行中の極檀優也さん。フォトブック作りや南部せんべいの紹介など、地元の魅力発信に取り組んでいる=7日、南部町
南部町の青い森鉄道三戸駅前で、1世紀を超えて旅人を迎える老舗「清水屋旅館」。その5代目として修業中の極檀優也さん(26)が、地域を盛り上げる地道な活動に取り組んでいる。科学者を志して県外の大手企業に就職したが、「思い出が詰まった旅館と人の絆.....
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 南部町の青い森鉄道三戸駅前で、1世紀を超えて旅人を迎える老舗「清水屋旅館」。その5代目として修業中の極檀優也さん(26)が、地域を盛り上げる地道な活動に取り組んでいる。科学者を志して県外の大手企業に就職したが、「思い出が詰まった旅館と人の絆を残したい」と昨年春にUターン。魅力的な風景をまとめたフォトブックを作ったり、店ごとに違う南部せんべいを紹介したりするなど、人の行き交う旅館から地域の魅力を発信している。[br][br] 「人の役に立つ科学者」が夢だった極檀さんは、八戸高専から東京農工大応用分子化学科へ進学。発光ダイオード(LED)に使われる半導体などを研究し、同大大学院で修士課程を修めた。卒業後は大手石油元売り会社に入り、仙台市の製油所に配属された。[br][br] 夢に向かって進んでいたさなか、帰省時に両親が何気なく口にした「旅館は自分たちの代で終わり」という言葉が耳に残った。「この旅館は多くの思い出や人の縁が詰まっている場所。なくなることが現実味を帯びた時、故郷がなくなるのと同じ重みを感じた」と振り返る。[br][br] また、県外に出てから感じた「人の絆」も帰郷を後押しした。「南部町には多くの幼なじみがいて、自然と深い絆があった。社会人になってから、それが簡単に得られるものではないと気付いた」と話す。[br][br] 2020年4月に南部町へ戻ったが、三戸駅前は人口減少の波にさらされ、複数あった旅館も清水屋だけになっていた。家業存続を考えた時、「旅館に泊まるのは町に用事がある人。旅館のお客さんというより町のお客さんだ」と考え、「町に人が集うようにしよう」と思い立った。[br][br] まず取りかかったのは、趣味の旅行や散歩でなじみがあった写真撮影だ。地域住民に地元の魅力を再発見してもらう意味も込め、駅前や法光寺、三戸町の城山公園などを撮って自作のフォトブックにまとめた。[br][br] さらに、南部、三戸両町に複数ある南部せんべい店の製品を買い集め、旅館で食べ比べができるもてなしも始めた。「手作りせんべいが生活に根付いている町のことを来訪者に知ってほしい。せんべい店の助けにもなれば」と狙いを語る。[br][br] 旅館の4代目で父の学さん(55)は「地元に戻ってくると聞いて最初は戸惑ったが、今は世代が違うからこそ生まれる発想が楽しみ」だという。母の純さん(52)も「新型コロナウイルスで時代は転換点を迎えている。旅館の枠にとどまらずに挑戦してほしい」とエールを送る。[br][br] 12月から旅館の人気メニューである鍋のテークアウトを始めたほか、今後は裏庭に大型テントを設置して人が集う場にする計画も練っている極檀さん。今後へ向け、「自分はすごいデザインができる訳ではない。地元民として、できることをやっていけたら」と静かに情熱を燃やす。 清水屋旅館の5代目として修行中の極檀優也さん。フォトブック作りや南部せんべいの紹介など、地元の魅力発信に取り組んでいる=7日、南部町