八戸市民病院、負担少の心臓手術法導入 術後の生活質向上に貢献

大動脈弁狭窄症における新たな手術方法について解説する河原井駿一医長=今月上旬、八戸市立市民病院
大動脈弁狭窄症における新たな手術方法について解説する河原井駿一医長=今月上旬、八戸市立市民病院
八戸市立市民病院では、動脈硬化などで心臓にある大動脈弁が正常に機能しなくなる「大動脈弁狭窄(きょうさく)症」への新たな治療法を導入している。手術中、人工弁を心臓に縫合せずにステントと呼ばれるバネで固定することにより、心臓を止めておく時間を大.....
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 八戸市立市民病院では、動脈硬化などで心臓にある大動脈弁が正常に機能しなくなる「大動脈弁狭窄(きょうさく)症」への新たな治療法を導入している。手術中、人工弁を心臓に縫合せずにステントと呼ばれるバネで固定することにより、心臓を止めておく時間を大幅に短縮でき、患者の体への負担を軽減することが可能。特に高齢者に多い疾患で、術後の患者のQOL(生活の質)の向上と地域医療のさらなる充実に期待が高まる。[br][br] 大動脈弁狭窄症は心臓弁に異常が生じる弁膜症の一つ。動脈硬化などで弁が正常に機能しなくなることで、心臓から血液を十分に送り出せなくなり、病状が進行すると息切れやめまい、胸の痛みなどの症状が現れ、重症化すると突然死の危険性もある。[br][br] 外科的治療では、機能しなくなった弁を特殊な素材で作られた機械弁または牛の心膜などを加工した生体弁といった「人工弁」に置き換える弁置換術が行われる。手術中は人工弁を縫い付けて固定するため、70~80分もの間、心臓を止めておかなければならない。[br][br] 一方、同病院で導入した新たな治療法「スーチャレス弁置換術」は、人工弁を縫合せずにステントで固定。心臓を停止させる時間が短く、40~50分で全ての手術を終えることができる。国内では2017年に薬事承認されたばかりの新しい技術で、同置換術を受けられる医療機関は全国的にもまだ少ない。[br][br] 同病院心臓血管外科の河原井駿一医長は「体への負担が少なく、特に高齢の患者にとってメリットは大きい」と強調する。[br][br] このほか、同病院では難易度が高い、心臓を覆う自己心膜を使った大動脈弁形成術も実施。体内組織で作られた弁は拒絶反応がなく、感染に強いのが特徴で、機能や耐久性も人工弁と同等かそれ以上だといわれている。人工弁を用意する必要がないことから、経済的な負担が少ないのもメリットの一つだ。[br][br] 現在、同病院では、スーチャレス弁置換術と大動脈弁形成術の両方の手術が可能。それぞれ耐久性や継続的な薬剤の必要性など長所や短所があり、患者が年齢や人生設計に合わせて、よりベストな選択をすることが重要となる。河原井医長は「心臓外科手術の選択肢が増えることは、患者さんのQOL向上につながる。地域医療の発展に貢献できれば」と思いを強くしている。大動脈弁狭窄症における新たな手術方法について解説する河原井駿一医長=今月上旬、八戸市立市民病院