【超高齢社会の先へ】第4部 社会からの孤立(2)

担当する地域の家庭を訪問し生活の様子などを聞く民生委員(右)。地域の見守りには欠かせない存在だ=10月30日、八戸市 
担当する地域の家庭を訪問し生活の様子などを聞く民生委員(右)。地域の見守りには欠かせない存在だ=10月30日、八戸市 
家族形態や価値観の多様化で地域のつながりが希薄になっている現代、地域住民が互いに助け合う「共助」の精神が薄れつつあり、地域から孤立する高齢者の増加も課題となっている。地域コミュニティーが衰退する中、地域住民と行政の懸け橋として地域の現状を把.....
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 家族形態や価値観の多様化で地域のつながりが希薄になっている現代、地域住民が互いに助け合う「共助」の精神が薄れつつあり、地域から孤立する高齢者の増加も課題となっている。地域コミュニティーが衰退する中、地域住民と行政の懸け橋として地域の現状を把握し、必要な支援に結び付ける「民生委員」は、誰もが安心して暮らせる地域づくりには欠かせない存在だ。民生委員の目から見た変わりゆく地域が抱える問題とは―。[br][br]   ◇    ◇[br] かつては地域住民のつながりは強く、有事だけでなく日常から地域の中で相互に助け合うのが当たり前だった。高度経済成長期になると都市化が進み、生活様式の変化とともに地域が果たす役割も大きく変わり、住民同士のつながりもだんだんと希薄になっていった。[br][br] 内閣府の意識調査によると、年々、近所付き合いの度合いは低下しているものの、「地域のつながりは重要」と捉えている人は多く、必ずしも地域コミュニティーについて無関心ではない、という現状が明らかになった。仕事や学校が忙しく、普段は家にいない家庭の増加が要因の一つと考えられ、若者を中心に地域活動に参加しづらい社会構造が浮き彫りとなった。[br][br]   ◇    ◇[br] 「昔よりも地域のつながりがなくなってきていると感じている」と話すのは、三八城地区民生委員児童委員協議会の藤田光子会長。[br][br] 同じ八戸市内であっても昔から住んでいる人が多い地区は結束力が強く、お互いに声を掛け合える環境があるのに対し、市外から来た人が多く居住する地区は、なるべく干渉し合わない傾向があるという。「特に近年はプライバシーの保護が重要視されるようになり、お互いに関わらないようにすることを良しとする風潮が強まっている気がする」とため息を漏らす。[br][br] 市内では、地域との関わりがないまま退職後に自宅で過ごす時間が増えた高齢者も多く、一人暮らしが長くなればなるほど、外部との関わりが煩わしくなり、孤立しがちになる人も少なくない。[br][br] 「最初はドアを開けてもらえないこともある」と話すのは市内で民生委員を務める女性。警戒心を解いてもらうために、何度も訪問を繰り返し、少しずつ関係性を築くように心掛けているという。「家族の話を聞く時はどこまで踏みこんでいいのか見極めが難しい。根気強く尋ねて、まずは顔を覚えてもらうのが活動の第一歩となる」[br][br]   ◇    ◇[br] 民生委員にとって、最も心の負担になるのが孤独死が発生した時だ。「誰もが『自分の地域から孤独死を出したくない』という気持ちで活動している」と藤田会長。しかし、どれだけ丁寧に地域内を回っていても、民生委員1人の活動には限界があり、やるせない気持ちになることもある。[br][br] 一方で、地域の人たちとの心温まる交流が活動の原動力だ。藤田会長は「訪問すると喜んでもらったり、頼りにしてもらったり、感謝やねぎらいの言葉を掛けてもらったり。そんなやり取りがやりがいにつながっている」と笑顔。住民同士が支え合える地域になることを願い、これからも地域の見守り活動を続けていくつもりだ。担当する地域の家庭を訪問し生活の様子などを聞く民生委員(右)。地域の見守りには欠かせない存在だ=10月30日、八戸市