【世界のJOMONへ】第4部 見えてきた登録(2)現地調査

三内丸山遺跡で行われた現地調査の様子(上)と、調査後に行われた文化庁と4道県の合同会見
三内丸山遺跡で行われた現地調査の様子(上)と、調査後に行われた文化庁と4道県の合同会見
2009年に世界遺産登録の前提となる「暫定一覧表」にリスト入りしてから約10年。「北海道・北東北の縄文遺跡群」は今月4~15日にかけて、登録に向けた最大のヤマ場である国際記念物遺跡会議(イコモス)の現地調査を受けた。18年に国内推薦候補に選.....
有料会員に登録すれば記事全文をお読みになれます。デーリー東北のご購読者は無料で会員登録できます。
ログインの方はこちら
新規会員登録の方はこちら
お気に入り登録
週間記事ランキング
 2009年に世界遺産登録の前提となる「暫定一覧表」にリスト入りしてから約10年。「北海道・北東北の縄文遺跡群」は今月4~15日にかけて、登録に向けた最大のヤマ場である国際記念物遺跡会議(イコモス)の現地調査を受けた。18年に国内推薦候補に選ばれてからも、自然遺産を優先する政府の方針で推薦が見送られるなど足踏みを続けてきたが、いよいよ登録につながるイコモスの「勧告」を待つことになった。[br] イコモスは推薦書などを基にした書類審査と現地調査の両方の結果から、登録の可否を判断する。例年通りの日程であれば、来年1月ごろに評価結果の中間報告、5月ごろに勧告があり、国連教育科学文化機関(ユネスコ)はイコモスの勧告を踏まえ、夏ごろに開く世界遺産委員会で登録の可否を最終的に決定する。[br] イコモスの評価結果は▽世界遺産登録がふさわしいとする「記載」▽追加情報の提出を求め、再審議する「情報照会」▽より綿密な調査や推薦書の改訂が必要な「記載延期」▽登録にふさわしくないとする「不記載」―の4区分で示される。仮に記載延期となった場合、推薦書の再提出後、さらに約1年半の審査が必要となる。[br] 現地調査後に構成資産を見直して再挑戦した例が、18年登録の「長崎と天草地方の潜伏キリシタン関連遺産」(長崎、熊本)。当初は「長崎の教会群」として推薦書を提出していたが、イコモスの中間報告で「禁教期に焦点をあてるべきだ」との指摘を受け、構成資産を14資産から12資産に修正。タイトルも禁教期を表すものへ変更した。[br] 縄文遺跡群は昨年末に提出した推薦書で、普遍的価値について「北東アジアにおいて、採集・漁労・狩猟を基盤に1万年以上定住した、農耕以前の生活の在り方を示している」と説明。1万年以上続いた縄文時代の生活の様子を切れ目なく示すには、17遺跡全ての構成資産がそろっての登録が不可欠となる。[br] 今回の現地調査で遺跡を説明する際、青森県の関係者らが腐心したのが地下遺跡の説明だ。三内丸山遺跡(青森市)や御所野遺跡(一戸町)など、構成資産の竪穴建物や掘立柱建物は復元されたものであり、遺構そのものは地下にある。そのため現地調査の本番では、遺跡内に「Burial area(墓域)」などの標識を設置。それぞれの場所にどのような遺構があるのか、分かりやすく説明した。[br] 調査終了後の16日に行われた4道県と文化庁の合同会見で、審査に同行した関係者らは「われわれの思いは伝わった」「勧告を心待ちにしたい」と手応えを強調。文化庁の担当者も「17遺跡で一体だと説明できた。今のところ構成資産見直しの可能性はない」と断言した。[br] イコモスの調査は終了したが、今後も遺跡群の価値を伝える活動は継続的に続けていく必要がある。[br] 県世界文化遺産登録推進室の岡田康博室長は「現地調査が終わったことで、山を越したとは思っていない。情報発信はこれから広く求められるので、しっかり取り組んでいきたい」と気を引き締めた。三内丸山遺跡で行われた現地調査の様子(上)と、調査後に行われた文化庁と4道県の合同会見