国の緊急事態宣言が解除されて以降、新型コロナウイルス対策を講じた上で再開している文化施設や芸術活動。一時は「不要不急」と言われた中で、文化・芸術に関わる人たちはコロナ禍とどう向き合い、発信していくべきか。十和田市現代美術館の鷲田めるろ館長(46)に聞いた。[br][br] ―2カ月間の休館を経て6月に再開した。[br] 常設展のみだった7月下旬の来館者数は例年の3分の1だったが、企画展を開始した現在は半数までになった。通常は県外客が7割を占めるのを踏まえると多い方だと捉えている。[br] 新型コロナウイルス感染対策として、換気や人数制限のほか、中に入って楽しんでもらう作品を外から見てもらうなど、本来の楽しみ方とは違う提案もしなければいけない。[br] 地元のイベントが中止になり、大切にしてきた街との結び付きが薄くなっているのも悲しい現状だが、美術館の一番の核は常設展示。企画展を中心とする美術館が多いが、コロナ禍で運営が難しくなっているのを鑑みると、コレクションの価値が重要だと感じる。本年度は常設を増やし、強みを生かしていきたい。[br][br] ―コロナ禍で変化したアートの価値観や役割は。[br] 現代美術全体で言うと、従来行ってきたワークショップやイベント、パフォーマンスアートの開催が難しくなった。現代美術は“物”から“事”に動く傾向があるが、絵画や彫刻などが生き残っているのを踏まえると、もう一度物に回帰していくかもしれない。コロナを機に、戻るのか、あるいは違う形で広がっていくのか、興味深い段階にいる。[br] 感染症は生態系の変化によって発生する。かつてのバランスに違いが生じてきている中で、人間と自然がどう向き合い、解決していくかが重要になってくる。[br] 当美術館では、人間と自然の関わりがテーマのアーティストを紹介してきた。常設展示の一つである栗林隆さんの作品もそうだ。自然との関わりが今後ますます重要な課題になる中で、アートは、人々に考える機会を与えてくれるツールだと感じている。[br][br] ―新たな芸術の提案の方法は。[br] 実際に見て、体験してもらう現代美術の醍醐味(だいごみ)は変わらない。オンラインコンテンツという方法もあるが、実際の体験には置き換えられない。より補足的な部分をオンラインで提供するのが望ましいと思う。[br] アートによる街づくりプロジェクト「アーツ・トワダ」の10周年を記念した企画展は当初、今年4月から2021年春までの予定だったが、コロナ禍でも鑑賞機会を確保するため、会期を1年延長した。[br] 文化施設は、工夫次第で密にならずに展覧会を開催できる。対策しながら足を運んでもらうのが鍵だ。[br][br] ―青森県内の公立美術館5館による連携事業の可能性は。[br] 県内の美術館を一つのパッケージとして見てもらうため、周遊の提案や共通ホームページの開設に向けて、昨年から関係者間で話し合ってきた。コロナが終息した際には、経済を活性化させる意味でも青森に足を運んでもらう必要がある。そのためにも、ベストなタイミングで発信できるよう準備を進めていきたい。