【連載・コロナと共に~変わる価値観~】(5)「医療」

インタビューに応じる眞瀬智彦氏
インタビューに応じる眞瀬智彦氏
深刻な医師不足に直面し、医療資源が限られている青森、岩手両県。新型コロナウイルスの感染が拡大する中、医療体制を維持するには、広域連携などさらなる知恵と工夫が求められる。地域医療をどう構築していくべきか、岩手医科大救急・災害・総合医学講座災害.....
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 深刻な医師不足に直面し、医療資源が限られている青森、岩手両県。新型コロナウイルスの感染が拡大する中、医療体制を維持するには、広域連携などさらなる知恵と工夫が求められる。地域医療をどう構築していくべきか、岩手医科大救急・災害・総合医学講座災害医学分野の眞瀬智彦教授(58)に聞いた。[br][br] ―限られた医療資源の中で、岩手はどんな体制整備を進めているか。[br][br] 医療資源の乏しさは県全体の連携と調整で補うしかない。そのためには、病院や関係機関がしっかりと役割分担し、資源を有効活用することが必須だ。[br] 新型コロナの患者が大幅に増加すれば、感染症指定医療機関だけでは対応が困難。そこで、特定の医療機関だけに負荷がかからないようにし、県全体で医療体制を支えていく仕組みが必要になる。[br] 岩手の場合、患者の状態を無症状・軽症から最重症までの4段階に分け、重症度に応じて受け入れ先の医療機関を調整する仕組みを作った。また、感染拡大の局面(フェーズ)を未発生期からまん延期までの4段階に設定し、フェーズごとに必要とされる病床を確保する計画も決めた。[br] これらを踏まえ、まずは2次医療圏の中でできることをしっかりやり、できない場合は医療圏を越えて県全体で考える。当たり前だが、こうした体制を強固なものにしたい。[br][br] ―県境をまたいだ広域医療に対する考え方は。[br][br] 岩手には、県北地方など県境をまたいで生活圏を形成する地域がある。通常の災害であれば隣県に患者を搬送することも想定されるが、新型コロナの患者の場合、そういうことが全国的には行われていない。[br] 各県とも新型コロナの対応に追われる中、基本的に患者を県外には出せないし、県外から貴重な医療チームをもらうわけにもいかない。どの地域であろうと、一義的に県内の患者は県が責任を持って治療すべきだ。[br] 一方、県境を越えて協力できたケースもある。東日本大震災の際に避難所の感染制御対策で成果を上げた「いわて感染制御支援チーム(ICAT)」という組織があり、4月には青森県の要請に基づいて十和田市にチームを派遣した。[br] 十和田では高齢者福祉施設での感染管理強化を支援した。チームは今後も、県内のみならず広域連携の中でも力を発揮するだろう。[br][br] ―新型コロナと共生する上で、地域医療に必要なことは何か。[br][br] 今はどうしても、新型コロナの対応に目が向いてしまいがちだ。長期的に見ると、新型コロナはあくまで病気の一部。がんや脳卒中など他の病気をおろそかにすると、必ずつけが回ってくる。[br] 岩手は医療資源に乏しいこともあり、基本的には一つの病院で両方を診ていくことになると思うが、新型コロナと他の病気とのバランスを保ちながら進めないと、地域医療が崩壊してしまう。両方の診療がしっかりできる仕組みを整えていく必要がある。[br] また、病院での感染を恐れて受診控えが起きていることも問題。受診しないまま病気が手遅れになっては元も子もない。解決するためにも、病院の感染症対策を徹底し、県民が安心して受診できる体制作りを進めたい。インタビューに応じる眞瀬智彦氏