青森県は自転車の安全利用指針となる条例について、2020年度内の制定を目指している。全国的に自転車側が交通事故の加害者となるケースが増加。自転車損害賠償保険の重要性が高まっており、加入促進につなげたい狙いがある。だが、県が示した条例骨子案では保険加入を強制力のない「努力義務」にとどめる。専門家からは加入義務化を求める声があるほか、罰則規定がない条例の実効性をどう高めるかなど課題も残る。[br] 県内では、自転車関連の交通事故件数は人口減少を背景に減少傾向が続く。一方、自転車側が加害者となる事故は、19年は8件発生。重大事故には至っていないが、18年から3件増えた。乗車中の事故で死傷した人が交通違反をしていた割合も増加傾向で、19年は57・1%にまで上昇。安全運転への意識低下も目立つ。[br] 自転車側が加害者となるケースでは、1億円近い賠償金を請求される事例が県外で発生している。[br] これら自転車事故による損害をカバーする代表的な保険が、「TSマーク」のステッカーをシンボルとする自転車損害賠償責任保険。賠償責任補償の上限は1億円で、2千円程度で加入できる。[br] 自転車購入時に加入する場合が多いが、期限は1年限定。期限があることを知らず、肝心の“恩恵”を受けられないことも多い。損害保険会社の調査では、県内の加入率は19年4月末で約4割。全国順位は40位と低く、県は条例化により改善を図りたい考えだ。[br] 今月3日に青森市で開かれた専門家による検討会では、条例制定を全委員が賛同。だが、「罰則がない分、周知や広報を工夫すべき」、「保険加入のメリットを分かりやすく説明することも必要」などと、県が示した骨子案の強化や改善を求める意見も上がった。[br] 取材に対し、県の県民生活文化課の担当者は「条例をきっかけに安全運転への意識向上を図りたい。自転車に乗るリスクや備えの大切さも再認識してもらいたい」と強調する。[br] 県は9月に再度検討会を開いた後、各市町村からの意見聴取や県民からのパブリックコメント(意見公募)を踏まえ、年明けにも内容を固める方針だ。