新規制基準の審査に正式合格した使用済み核燃料再処理工場が立地する六ケ所村では、原子力災害を想定した避難路の確保が課題となっている。避難路となる国道や県道は道幅が狭く、大型津波などの複合災害時には通行に支障を来す恐れがある。村関係者は「避難の問題が解決しなければ、操業開始にも影を落とすことになる」と指摘し、国や青森県に村内の道路整備を強く訴える。[br] サイクル施設に関する村の避難計画策定を巡っては、県が今年3月に基本方針を決定。工場から5キロ圏内の住民約3600人について、放射線量が基準を上回った場合に南側へ避難することとしている。村は方針を基に、本年度中に計画を完成させる考えだ。[br] 課題となるのが、自然災害や東通原発との同時発災など複合災害を想定した場合の交通網のもろさだ。[br] 避難路となる村内の道路には急カーブが連続している地点や幅員の狭い場所が存在。5キロ圏内の住民だけなら対応できるものの、複合災害時は村北部の泊地区や東通村などからも避難者が南下して交通量が増えるため、途中で渋滞などを引き起こしかねない。[br] 主要な避難路と見込まれる沿岸の国道338号についても津波が発生した場合に浸水などの恐れがあるという。実際、2011年の東日本大震災では津波注意報により、一部で通行止めが発生した。村内からは国道の高台移転などを求める声も出ている。[br] 338号が使えない場合、泊地区住民の逃げ道は限られる。同地区から西側の横浜町方面に続く県道泊陸奥横浜停車場線が、唯一の避難ルートとして考えられているが、未舗装区間が多い峠道で冬期間は閉鎖されるため、村は「最悪の場合、同地区が孤立する可能性もある」と指摘する。[br] 審査に合格し、再処理工場の完成が現実味を増す中、村はこれまで生活道路として整備を求めてきたこれらの道路について、改めて避難道路と定義した上で国や県への要望活動を強化する方針だ。[br] 戸田衛村長は取材に「工場の稼働と避難路の確保は一体で考えられるべき問題だ。国や県には、国策に協力している立地自治体の整備を重点的に考えてほしい」と要望。道路整備で安全が確保されなければ、操業の前提となる安全協定の締結に影響する可能性もある―とけん制する。