農業と地元の魅力、肌で実感 野菜の栽培から販売まで体験/八戸・島守中

「島中ファーム」で農作業をする生徒たち。本年度は12品種の野菜を育てている=6月下旬、八戸市南郷島守地区
「島中ファーム」で農作業をする生徒たち。本年度は12品種の野菜を育てている=6月下旬、八戸市南郷島守地区
八戸市立島守中(熊谷誠二校長)は2018年から、ユニークな農業体験授業を行っている。苗の定植や収穫作業だけでなく、育苗から普段の畑の管理、生産物の販売まで生徒自身が手掛けており、その収益も、生徒たちが考案した地元活性化イベントの運営費に充て.....
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 八戸市立島守中(熊谷誠二校長)は2018年から、ユニークな農業体験授業を行っている。苗の定植や収穫作業だけでなく、育苗から普段の畑の管理、生産物の販売まで生徒自身が手掛けており、その収益も、生徒たちが考案した地元活性化イベントの運営費に充てている。これらの取り組みは過疎化が進む島守地区や、そこの基幹産業である農業の魅力を肌で実感してもらおうと願う教職員、地元住民の協力によって支えられている。[br] きっかけは、16年度に行われた生徒による地域活性化のアイデア発表だった。「せっかくだから、実現できそうな案はかなえてあげたい」。北澤亮一教諭らは翌17年度、総合的な学習の時間を使い、当時の3年生に協力。地域の住民が集える場を作り、えんぶり組を招いて舞を鑑賞するなど生徒や住民の好評を博した。[br] 北澤教諭らは「地域活性化なら、次は農業だ」と指導目標を定めた。地元では身近な産業である半面、少子高齢化で生産力は低下し続けており、後継者も少ない。「島守出身者として、農業でもきちんと生計を立てられることを知ってもらおう」との思いから、学校に隣接する畑地を借り受け「島中(スマチュウ)ファーム」と命名、できる限り生徒自身に栽培から販売まで責任を持たせることにした。[br] 任されたのは、18年度の新入生たち。何が栽培に適しているかも分からないままに、育てる野菜の種類をみんなで選択し、農家の保護者からアドバイスを受けて畑作業に従事した。[br] しかし、無農薬栽培に自然は甘くなかった。トウモロコシは虫に食い尽くされ、露地のトマトは雨で実が割れた。ゴボウは成長不良。それも大事な学びだった。[br] 無事に育った野菜は、産直や他校のバザーで予想以上に高評価で取引され、市内での食関連のイベントにも野菜を積極的に提供。生徒たちの努力は、収益という形で具現化した。[br] 2年目の農作業は、育てやすい品種を絞り、作付面積を拡大。校門前に無人販売所を新設するなど、新たに販路を広げた。本年度は地元の生産物を「島守野菜」と独自に名付け、ブランド化による島守全体の農業活性化に挑戦する。[br] 現在は全学年が、総合的な学習の時間で農業関連の学びに取り組んでいる。3年生は地道な作業も手慣れた様子で、川畑匠平さんは「将来は農業に進んでもいいかな」と照れ笑い。パソコン機材で無人販売所の看板を作る廣崎莉音さんは「畑作業以外の方法で農業を支える仕事もあることが分かった」と話す。[br] 生徒の農業支援にも携わるPTAの松石徹会長は「野菜だけでなく、島守の魅力を知り、地元に残ってくれる動機付けになってくれれば」と期待。熊谷校長は「地元住民の惜しみない協力が最大の成功要因。教職員も一体で意欲的になっていて、毎日がとても楽しい」と感謝を惜しまない。[br] 収益で買った材料で完成させた2台の筏(いかだ)は今夏、新井田川に浮かべる予定だ。「島中ファーム」で農作業をする生徒たち。本年度は12品種の野菜を育てている=6月下旬、八戸市南郷島守地区