「負けない。」伝統の灯 絶やさない 八戸「森のおとぎ会」初の動画配信へ

長者山新羅神社で行われた森のおとぎ会の動画撮影=5日、八戸市(写真はコラージュ)
長者山新羅神社で行われた森のおとぎ会の動画撮影=5日、八戸市(写真はコラージュ)
八戸市の長者山新羅神社境内で毎年夏に開かれる「森のおとぎ会」。童話や民話、昔話などを語り聞かせ、夏休み中の子どもらを長年楽しませてきた。97年目の今年は、新型コロナウイルスの影響で通常開催を見送り、臨時措置としてユーチューブを使った動画配信.....
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 八戸市の長者山新羅神社境内で毎年夏に開かれる「森のおとぎ会」。童話や民話、昔話などを語り聞かせ、夏休み中の子どもらを長年楽しませてきた。97年目の今年は、新型コロナウイルスの影響で通常開催を見送り、臨時措置としてユーチューブを使った動画配信に切り替える。主催する八戸童話会の柾谷伸夫会長(71)は「苦渋の決断だが、伝統の灯を消すわけにはいかない」と強調。新たな挑戦で先人たちの思いをつなぐ。[br] 森のおとぎ会は1924年、八戸大火で焼け出された子どもたちを励まそうと、市内の教員らが中心となって始めた。昭和40年代には500~600人の子どもや保護者らが訪れ、境内を埋め尽くしたという。[br] だが、少子化や娯楽の多様化などで、参加者は徐々に減少し、語り手の高齢化も進んだ。100回の節目を見据え、将来的な存続に向けた打開策を模索していたところに新型コロナの問題が降りかかった。[br] 屋外のイベントとはいえ、近年でも多い日は約130人が集まる。同会では社会的共感を得るのが難しいと考え、例年通りのお話会の中止を決めた。戦後では初めてのことだった。伝統行事を守る方法がないか必死に探る中で、たどり着いたのが動画配信だった。[br] 今月5日朝、小雨がちらつく中、動画の撮影は始まった。境内にある「おとぎの桜」前の定位置に瞳を輝かせる子どもたちの姿はない。笑い声や拍手も聞こえない。それでもステージの語り手たちは、画面の向こうで待つ子どもたちに笑顔で語り掛けた。[br] 語り手を務めるのは5回目の市立第一中2年の齋藤悠凪(ひさな)さん(13)は「初めは、いつもと雰囲気が違い緊張した」と言いながらも、南部地方の民話「メドツの宝物」を流ちょうな南部弁で披露。「人がいない舞台は慣れないけど、見られていない分、リラックスできた」と振り返った。自作の紙芝居の読み聞かせに挑んだ、市立長者小4年の橋本真緒さん(9)は「ほかにも読む人がいたから、寂しくなかった」と笑った。[br] 初めての試みを終え、「正直、やりにくかった。お客さんの反応を見ながら一緒に作る部分もある…。やっぱりお客さんの目の前でやるのが一番」と複雑な表情を浮かべた柾谷会長。動画配信は今年限りとしつつ、「動画なら全国に届けられる。生で見たい、ステージに立ちたいと思う人が増えれば」と先を見据えた。[br] 配信は20日からの予定。同会ホームページで閲覧できる。アドレスはhttps://hachinohe-douwa.blogspot.com/長者山新羅神社で行われた森のおとぎ会の動画撮影=5日、八戸市(写真はコラージュ)