【世界のJOMONへ】第3部 知られざる縄文の魅力(2)オリジナルグッズ

小牧野遺跡のミュージアムショップ。中央が遮光器土偶ニット帽=4月下旬、青森市 
小牧野遺跡のミュージアムショップ。中央が遮光器土偶ニット帽=4月下旬、青森市 
「とってもかわいい」「企画力が異次元」―。今年1月、ある縄文グッズが会員制交流サイト(SNS)上で話題になった。注目を集めたのは、青森市にある小牧野遺跡の保存活用協議会が開発した「遮光器土偶ニット帽」。同協議会の担当者が、ニット帽を身につけ.....
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 「とってもかわいい」「企画力が異次元」―。今年1月、ある縄文グッズが会員制交流サイト(SNS)上で話題になった。注目を集めたのは、青森市にある小牧野遺跡の保存活用協議会が開発した「遮光器土偶ニット帽」。同協議会の担当者が、ニット帽を身につけた写真を交流サイト「フェイスブック」に投稿したところ、県内外から100件以上の問い合わせが殺到。在庫が足りず、わずか2日で販売を休止した。商品を手掛けた同協議会理事の後藤公司さん(44)は「人気が出るだろうとは思っていたが、まさかここまでとは…」と驚いた。[br] 同遺跡は、世界文化遺産登録を目指す「北海道・北東北の縄文遺跡群」構成資産の一つ。石を円形に並べた「環状列石」で有名な縄文時代後期の遺跡で、同市の中心部から約9キロ離れた山中にある。同協議会は遺跡の指定管理者。ニット帽は、大きな眼鏡を掛けたような形が特徴的な「遮光器土偶」の頭部を再現したオリジナルグッズだ。[br] ニット帽をはじめ、同遺跡にまつわるグッズやイベントを多数手掛けている後藤さん。実は、考古学の研究に携わった経験はない。もとは同遺跡を管理するスタッフだったが「縄文のことは全く知らず、原始人のようなイメージを抱いていた」。同遺跡を初めて見たときの印象も「森の中に石が並んでいるだけ。ピンと来なかった」という。[br] そんな後藤さんが縄文に興味を持ち始めたのは、当時の人々を身近に感じたからだった。多くの人が集う祭祀さいしの場所だったと考えられている同遺跡に「青森ねぶた祭り」が大好きな自分自身との共通点を感じた。[br] 縄文時代の人々は、環状列石の周りで酒を飲んでいたのか、太鼓でもたたいていたのか―。当時の雰囲気を再現しようと、現在は毎年夏に遺跡で土器作りをしたり、太鼓を演奏したりする「こまきのヴィレッジまつり」を企画。「興味がない立場だったからこそできることがある。一般の人に興味を持ってもらうためには、敷居を下げることが必要だ」と指摘する。[br] さまざまな角度からファンを獲得しようと、同遺跡のミュージアムショップには、県内外のクラフト作家が縄文をモチーフに製作したグッズがそろう。土偶の形をしたカラフルなキャンドルや岩版を模したガラス細工など一点物も多い。[br] その中で、縄文に関心が薄かった人の入り口となったのが「遮光器土偶ニット帽」だった。ニット帽を購入したのは遺跡を知らない人がほとんど。グッズを通して遺跡を知り、「足を運んでみたい」という声もあったという。「縄文遺跡群のことをいくら語っても、関心を持つ人は限られる。興味がない人にどう訴えるか考えることが本当の(世界遺産登録の)機運醸成ではないか」と強調する。[br] 県内には同協議会のほかにも、縄文がテーマのフェスやイベントを催したりしている団体がある。後藤さんは「民間同士で協力し、行政ができないことをやりたい」と夢を膨らませる。小牧野遺跡のミュージアムショップ。中央が遮光器土偶ニット帽=4月下旬、青森市