技術生かし苦境しのぐ 医療用ガウン、マスク製造/岩手県北の縫製業者

医療用ガウンの製造に取り組む岩手モリヤの従業員=14日、久慈市
医療用ガウンの製造に取り組む岩手モリヤの従業員=14日、久慈市
岩手県北地方の縫製業者が、新型コロナウイルスの感染拡大による需要増加を受け、医療用ガウンやマスクの製造に乗り出している。従来の服飾の製造はアパレルメーカーからの受注減やキャンセルに苦しむが、技術を生かした新たな製品づくりに挑戦し、医療現場や.....
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 岩手県北地方の縫製業者が、新型コロナウイルスの感染拡大による需要増加を受け、医療用ガウンやマスクの製造に乗り出している。従来の服飾の製造はアパレルメーカーからの受注減やキャンセルに苦しむが、技術を生かした新たな製品づくりに挑戦し、医療現場や社会への貢献を目指す。ただ、例年に比べて大幅な売り上げ減は避けられないのが現状。先行きの不透明さに不安を抱えながら、生き残りへの方策を模索している。[br] 国内外人気ブランドの婦人服縫製を手掛ける「二戸ファッションセンター」(二戸市、塚根薫社長)は、グループ会社全体で国発注の医療用ガウン20万着を商社経由で受注。このうち、同社では5万着前後を製造する予定だ。 [br] 生地の不織布は静電気が発生しやすい素材のため、部屋の湿度を高め、ほこりが付かないように細心の注意を払って作業するなど試行錯誤を重ねる。普段は研修用の部屋を医療用ガウン製造専用スペースとし、従業員が急ピッチで作業を進める。[br] 塚根社長は「百貨店主流のブランドの受注はほぼゼロになり、売り上げは厳しい。この状態がしばらく続くと考えて知恵を絞り、世間に役立つ仕事があれば継続したい」と語る。[br] 国内一流ブランドの高級婦人服の縫製を手掛ける「岩手モリヤ」(久慈市、森奥信孝代表)も、今月から不織布を使った医療用ガウンの製造を開始。9月まで1カ月当たり約4万枚を生産する計画で、森奥代表は「社員の雇用を守りながら最前線の医療現場に貢献できるのは有り難い」と受注に感謝する。[br] このほか、2社を含む二戸・久慈両地域の縫製業者16社で構成する「北いわてアパレル産業振興会」は県からマスク3万枚を受注し、二戸・一戸5社、久慈4社で生産を担っている。[br] それでも、大幅な売り上げ減は避けられない。首都圏の百貨店から客足が遠のき、岩手モリヤでは4月から受注がほぼなくなった。現在は、従業員約80人の半数が休業。雇用調整助成金を活用して研修を受ける。消費動向の回復を待ちながら、医療用ガウンで急場をしのぐ形となっている。[br] 森奥代表によると、医療用ガウンはこれまでほぼ海外からの輸入だった。「今回、国が海外ではなく国内の縫製業に目を向けてくれたのをきっかけに、国内で使うものは国内で生産する本来の形に戻れば」。コロナ禍を国内回帰の契機にすべきだ―と訴える。医療用ガウンの製造に取り組む岩手モリヤの従業員=14日、久慈市