【震災9年】ヨウ素剤、事前配布率4割に 住民の認識薄れる

東通村で保管されている安定ヨウ素剤。丸薬(左)のほか、乳幼児向けのゼリー剤(右)もある=3日、東通オフサイトセンター
東通村で保管されている安定ヨウ素剤。丸薬(左)のほか、乳幼児向けのゼリー剤(右)もある=3日、東通オフサイトセンター
未曽有の被害をもたらした東京電力福島第1原発事故から間もなく9年。事故を教訓に新規制基準による原子力施設の審査が続く一方、住民の原子力災害に備える意識は薄れつつある。甲状腺被ばくを防ぐ医薬品「安定ヨウ素剤」は事故後、原発から5キロ圏内の住民.....
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 未曽有の被害をもたらした東京電力福島第1原発事故から間もなく9年。事故を教訓に新規制基準による原子力施設の審査が続く一方、住民の原子力災害に備える意識は薄れつつある。甲状腺被ばくを防ぐ医薬品「安定ヨウ素剤」は事故後、原発から5キロ圏内の住民に事前配布されることとなったが、東北電力東通原発(東通村)の対象住民への配布率は2019年8月時点で39・34%。関心の低下により、配布開始時の約7割から大きく落ち込んでいる。青森県や村は「事前配布の意義を認識してほしい」と訴える。[br] 県内では16年度から同原発の対象者に安定ヨウ素剤の事前配布が始まり、毎年、医療関係者による説明会で村が対象住民に配布している。[br] 18年の配布率は2748人中1876人の68・27%だったが、19年8月時点の配布率は約4割にとどまった。村原子力対策課の川上博之課長は「(19年度以降)40歳以上は希望者が対象となったが、年齢別で配布率を見てもばらつきはない。震災から時間がたち、注目度が下がってきている」と話す。[br] 甲状腺被ばくの原因となる放射性ヨウ素は、年少者ほど影響が大きいとされる。県は村外を含む30キロ圏内人口の3倍程度の数に当たる46万丸を備蓄し、緊急時も不足がないようにしているが、配布率の低下が進めば、災害時に子どもが迅速に処置を受けられなくなる恐れがある。[br] 村は対象者全員に案内状などで説明会を周知している。住民が参加しやすいよう、時間帯を平日と土曜日の昼過ぎと夕方に設定するなど、配布率向上に向けて工夫を凝らすが、注目度の低下もあって参加者は減少しているのが現状だ。[br] 18年度配布分までの使用期限は3年で、19年度は初めての更新配布時期だったことも配布率低下につながった要因とみられる。県医療薬務課は「更新時期には他県でも同様に配布率が低下している。以前受け取った人が期限切れの薬剤をまだ持っている可能性がある」と指摘する。[br] 全国的に配布率が低い状況を受け、国は事前配布時に医師の説明を必須とした指針を、指定された薬局であればチェックシートを使って配布できるよう見直した。[br] 現在、薬局での配布手続きの実現に向け、国と県の間で協議が進められている。川上課長は「可能になれば、薬局でも受け取れるということをしっかり広報すし、配布率向上につなげたい」と期待する。東通村で保管されている安定ヨウ素剤。丸薬(左)のほか、乳幼児向けのゼリー剤(右)もある=3日、東通オフサイトセンター