【超高齢社会の先へ】第2部 介護現場のリアル(1)

介護施設での朝食時間の様子。介護士は介助をしながら食事量をチェックし利用者の体調管理にも気を配る=2月5日、八戸市市川町の特養施設「寿楽荘」
介護施設での朝食時間の様子。介護士は介助をしながら食事量をチェックし利用者の体調管理にも気を配る=2月5日、八戸市市川町の特養施設「寿楽荘」
介護を必要とする高齢者が増加する中、24時間365日休むことのない介護現場では、利用者に寄り添いそれぞれの「暮らし」をサポートするため、多くのスタッフが連携して介護を提供し続けている。第2部では、特養施設や在宅介護などさまざまな介護現場に目.....
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 介護を必要とする高齢者が増加する中、24時間365日休むことのない介護現場では、利用者に寄り添いそれぞれの「暮らし」をサポートするため、多くのスタッフが連携して介護を提供し続けている。第2部では、特養施設や在宅介護などさまざまな介護現場に目を向け、そこで働くスタッフ、介護やみとりを経験した家族のリアルな声から現状を探り、これからの介護の在り方を考える。[br]   ◇    ◇[br] 八戸市の社会福祉法人寿栄会(田名部厚子理事長)が運営する特別養護老人ホーム「寿楽荘」には、入居者とショートステイ合わせて90人以上の利用者が生活している。ほとんどが認知症の人で、トイレや食事などの生活支援が必要な高齢者だ。[br] 施設の朝は早い。起床時間は午前5時ごろで、同7時には朝食が始まる。介護士は1人で複数人の食事介助を行う。介護士の女性は「自力で食事ができても誤嚥ごえんのリスクがあるため食事中は片時も目を離せない」と気を張り詰める。[br] 同8時ごろには食事が終わり、利用者の大半が自室に戻る。このタイミングで全員のおむつ交換やトイレ介助を行う。同9時ごろからは入浴時間。5人ほど入れる広い浴室はまるで銭湯のよう。背中を流してもらう利用者の表情はほっこりと気持ち良さそうだ。[br] 午後は自由に過ごすか、季節のイベントや外部団体の慰問などのレクリエーションを行う日もある。夕食は午後5時。同7時ごろにはほぼ全員が就寝し、施設は静寂に包まれる。[br]   ◇    ◇[br] 静かな時間はほんのひとときだった。[br] 午後9時ごろ、どこかの部屋から「大変です。誰かお願いします」と大きな声が響いてくる。介護士が駆け付けると、女性利用者がトイレ介助を求めていた。処理中、別室のナースコールが鳴る。介護士は「自力で起き上がろうとして転倒してしまう人もいるので後回しにできません」と、女性のケアを素早く済ませ別室へ走る。駆け付けた先はついさっきおむつ交換したばかりの女性で、再度排せつ処理を求めていた。[br] 午前1時ごろ、「お茶が飲みたい」と女性利用者が共有スペースにやってきた。喉を潤した後も廊下を行ったり来たり。同2時ごろ、薄暗い共有スペースには1人でテレビを眺めている男性利用者の姿があった。見たい番組があるわけではない。男性は「眠くならないんだよ」と一晩中、介護士に話しかけていた。[br] 再びナースコール。女性利用者がおむつを外してしまい、シーツをぬらしていた。介護士は「おむつをびりびりに破いている時もありますよ」と、手際よく交換作業に取りかかる。[br] 同3時ごろ、ほとんどの利用者は既に起きていて目はぱっちりと開いている。同4時半ごろには介護士が起床準備を行い、共有スペースに移動させていく。朝食を待つ間、温かいタオルで顔を拭き、体温や血圧測定、水分補給をしているうちに、窓からは朝の日差しが差し込んできた。[br]   ◇    ◇[br] ナースコールや1時間おきの見回りの合間に洗濯物や翌日の準備、利用者への口腔こうくうケアなど多くの仕事をこなす夜勤対応の介護士。休憩時間以外で座っている姿を見ることはなく、結局、何度のナースコールが鳴ったのかを数え切ることはできなかった。介護士たちの言葉に衝撃を受けた。「今日はナースコールは少なくて平和だったね」介護施設での朝食時間の様子。介護士は介助をしながら食事量をチェックし利用者の体調管理にも気を配る=2月5日、八戸市市川町の特養施設「寿楽荘」